なぜ海外文学を読むのか/ハン・ガンのノーベル文学賞受賞によせて

 お店の棚には海外文学がたくさんある。もちろん日本語で書かれたものもあるが、日本語ではない言語で書かれたものが、日本語に翻訳された本も多い。「翻訳書はハードルが高い」などと時々言われることがあるが、そんなことはないと私は […]

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「あいだ」にとどまる/『隣の国の人々と出会う 韓国語と日本語のあいだ』書評(2024/10/4)

 この本は、創元社「あいだで考える」シリーズの9冊目として刊行された。著者が翻訳した作品は、これまで私も10冊以上読んできた。私はそれらの作品を読むとき、日本語で読みながら、それが韓国語で書かれたものであること、つまり自 […]

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「おくのほそ道」を旅する/芭蕉、ユルスナール、森崎和江(2024/9/27)

 東北への旅は半年ほどまえから決めていたことではあるが、具体的な計画もないまま、出発の日が近づいていた。出発まえのタイミングで、ちょうど「おくのほそ道」の新訳が文庫として刊行されることを知ったので、その本をカバンに入れて […]

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エスターのように自由に、エスターのように美しく/『ベル・ジャー』書評(2024/9/13)

 主人公であるエスター・グリーンウッドとおなじくらいの年齢のときに、はじめてこの小説を読んだ。2004年に刊行された青柳祐美子訳の『ベル・ジャー』はすでに品切になっていて、図書館の書庫から出してもらって夢中で読んだのを覚 […]

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「外部から自分たちをもう一度見る想像力」/徐京植、そして石牟礼道子の地図(2024/8/31)

 大学の研究室の本棚にあった徐京植の『プリーモ・レーヴィへの旅 アウシュヴィッツは終わるのか?』を手に取ったのは、水俣関連の本が並ぶ棚の中に、この本が一冊まぎれているように見えたからだった。そうやって私は大学の研究室でこ […]

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視線を遠くに投げる/チョン・セラン『シソンから』書評(2024/8/15)

 『シソンから、』という物語の中心にいるシム・シソンは、朝鮮戦争によって家族全員を失い、ハワイへの移住を経てヨーロッパに渡り、芸術家としての人生をはじめた人物である。シソンはヨーロッパで画家としての仕事をしたあと韓国に戻 […]

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茅辺かのうという生き方(2024/8/8)

 茅辺かのう『アイヌの世界に生きる』を2021年の刊行後すぐに手にとってから、3年が経った。『アイヌの世界に生きる』から強烈な印象を受けたものの、著者である茅辺かのうについては、一人で北海道に渡り、十勝のアイヌ農家の家に […]

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小説の中の他者/ウィラ・キャザー『マイ・アントニーア』を読む(2024/8/1)

 ウィラ・キャザーは1873年、アメリカのヴァージニア州に生まれた。F・S・フィッツジェラルド、アーネスト・ヘミングウェイ、ウィリアム・フォークナーらとほとんど同時代に活躍した。『グレート・ギャツビー』がキャザーの物語構 […]

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王子さまのように/サン=テグジュペリと須賀敦子(2024/7/26)

 サン=テグジュペリの『星の王子さま』を実際に読む以前から、その中の台詞を時々耳にすることがあったからなのか、大学生になるまでまともに『星の王子さま』を読んだことがなかった。当然、サン=テグジュペリの他の作品も知らないま […]

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未来を散歩する/『未来散歩練習』書評(2024/7/24)

「でも、私たちが本当に向き合うことができるなら、お互いの手を見つめていた顔を上げて向き合うなら、そのとき私たちには言えることが何もないだろうか。そうではないだろう」 (パク・ソルメ『未来散歩練習』斎藤真理子訳、白水社、2 […]

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